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バスで学校までと、二時問余りはかかりました。朝は六時二十七分のバスに乗るのですが、冬など、まだあたりは薄暗く、本人も大変だったと思います。
如月のまだ明けやらぬバス停へ
はく息白く我が子息ぎぬ
大宮校では、女の子に必要な家庭科の和裁、洋裁、編物など一通り身につけることができ、他の授業も学べて、娘にとって本当によかったと思います。上に三人の兄がいたので、わりと物おじせず、明るい子でしたので幸いしたのでしょうか。
一番感動したのは、幼稚部に入ってはっきりでなくても、「お母さん」と言ってくれたことでした。また、大宮校で運動会に花笠音頭を踊ったときです。先生の叩く太鼓が秋空に響き、子供たちは全員、揃って踊っているのです。「この子たちは本当に耳が聞こえないのだろうか」と、つくづく感動しました。
秋空にひびく太鼓に踊る子等
耳きこえてか我が日うたがう
お陰さまで大宮校を無事卒業し、学校の推薦で三菱信託銀行内の青山ビジネスセンターに入社し、早朝のバスで九年間通勤いたしました。現在は、家の近くの歩いて十五分のあさひ銀行へ勤めて四年目になります。青山のときは、聴覚障害者は二十五名いて、キーパンチャーとして働いていました。
あさひ銀行では障害者は初めてとのことで心配でした。あけみの場合、小学部一年はほとん

 

 

 

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